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東京地方裁判所 昭和45年(ワ)11736号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕三(損害の填補)

本件事故に関し、原告らが総額で自賠責保険金三六六万一、二一〇円を受領していることは、当事者間に争いない。被告は右保険金より葬儀費金一五万円を控除した金三五一万一、二一〇円が慰藉料に該当し、従つて本訴原告らの慰藉料より各金四三万八、九〇一円二五銭を控除すべきである旨抗弁し、原告らは、亡ふての慰藉料相続分については各原告いずれも金六万二、五〇〇円ずつ、原告ら固有の慰藉料については各金二五万円ずつ合計各三一万二、五〇〇円の充当があることは自陳するが、これをこえる部分については被告の抗弁を争うので、これについて検討する。<証拠>、弁論の全趣旨によると、原告らは母に対する孝養心を顕らかにするため、亡ふての葬儀を盛大に行ない金三四〇万円程度の出費をなしたこと、亡ふては事故当時家事労働と商店経営の手伝に従事して、社会的にもその有効性を評価しうる稼働をなし、自賠責保険金査定の際も、その価値の存在は肯定され、その現存価値は金四一万円と算出されていたこと、が認められ、右認定に反する証拠はないところ、前示原告の年令および健康状態と右認定事実によると、亡ふては、毎月金二万四、〇〇〇円の収益を五〇%相当の生活費を負担しつつ、事故後三年間は挙げえたものと認められ、この現在価値を月別ライプニッッ方式で、なお、事故後六日間は生存していたことから、この間は生活費を控除しないこととして、算出すると金四〇万一、〇四七円であるから、右は亡ふての逸失利益として自賠責保険金より控除すべきであり、次に葬儀費用は、右認定のとおり極めて多額なものとなつているけれども、とくに社会的にみて相当な範囲をこえて、孝養心を顕らかにするため過大な出費をしたものまで、事故による損害として被告に負担させるのは、事故と相当の因果関係を有しない損害を賠償させることになるので正当でなく、右葬儀費用は、前掲亡ふての年令・社会的地位・原告ら遺族の心情その他に照らしても金二五万円の限度が社会的にみれば相当であり、これを自賠責保険金より控除すべきである。なお、事故による損害賠償請求権は、権利主体ごとに一個の訴訟物を構成するもので、被害法益ごと、あるいは治療費・逸失利益といつた費目ごとに訴訟物が成立するものではなく、また、要件事実面でも右各費目額は事実の限界付けを果すもので、要件事実そのものではないから、弁済の抗弁事実も、どの権利主体に、どの事故による損害賠償金が支払われたかを明らかにすれば足り、その余の事実は再抗弁又は間接事実となるもの、と解すべきであるから、本件では、各原告いずれも金三一万二、五〇〇円の本訴請求権への賠償金支払があることは当事者間に争いなく、被告の抗弁のうち争いあるのは、右をこえ金四五万七、六五一円二五銭に達する迄の弁済の存否ということになるところ、前記認定事実によると、右金三一万二、五〇〇円をこえる金三七万六、二七〇円三七銭に達する迄弁済のあつたことが認められることになるので、これを各認定慰藉料額より控除した、原告与作については金一二万三、七二九円六三銭、その余の原告らは各金二万三、七二九円六三銭ずつを、本件事故により蒙つた精神的損害を慰藉する相当額として請求しうることになるのである。 (谷川克)

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